追悼・水島新司先生永遠なれ

先日、水島新司先生がお亡くなりになりました。訃報が全国ニュースとなり、球界のビッグネーム達から追悼のコメントが寄せられるのを見て、そんなに偉大な先生だったのかと驚かされました。

私が先生の作品を知ったのは、小学3年生の時と記憶しています。兄の持っていた「球道くん」(球児の章)の主人公が小学生だったので、すんなり世界に入り込めました。その後、「ドカベン」「大甲子園」「一球さん」「野球狂の詩」「あぶさん」・・・と、兄の所有作品を片っ端から読んでいくことになります。

しかし、水島漫画を読んでいる同級生がおらず、あんまり人気のない漫画家なのかな?と思ったりしていました。なので、誰かと作品のことを語ることもなく、その後連載された「虹を呼ぶ男」などもひっそりと楽しんでいました。

ただ、先生の作品をきっかけに野球に興味を持ち始めたのは事実です。とにかく「球道くん」の中西球道と、「ドカベン」の殿馬一人に憧れて、打つ方は右投げ左打ちの中西スタイル、守りは殿馬に憧れてのセカンドを目指し野球部に入部したのを覚えています。

では、私の作品評を書いておきます。

大甲子園

とにかく水島オールスターと言える贅沢な内容で、全く飽きることのない作品です。なんといっても、明訓高校対青田高校の延長18回再試合は漫画でありながら「球史に残る」と言っても過言ではないくらい素晴らしい戦いでした。私は中西球道のファンでしたので、読みながら一生懸命に青田を応援していたくらいです。本当は延長の途中で、中西が討ち取られて終わりの予定稿だったそうですが、あまりにスイングが完璧なのでホームランになり、試合が続いたという逸話も残るほど。この試合だけを何冊かに集めた豪華版の発売を切望します。ただ、この試合で息切れしてしまったのか、再試合と紫義塾戦はすごくリアリティのない試合になってしまいましたね。

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②球道くん

これはもう野球というよりも人間ドラマが半端ない作品です。球道の父親が倒れ、搬送された先で急逝、そこで入院していた中西大介と看護婦だった愛子が球道を引き取る形で結婚。未就学児の頃から不思議な力と野球センスを見せ、学童時代にはケンカに明け暮れるが、野球部を作ることで不良仲間も引きれて野球に打ち込む。大介の日本ハム移籍で千葉に舞台を移し弱小高校を甲子園に導く。最後は母親と再会して完結。素晴らしい完成度でした。これはのちに満田拓也先生がヒットさせる「メジャー」の下敷きになっているのは有名ですよね。私としては唯一、的場はどうなったの?と聞きたいです。

ドカベン(後半)

この作品、私は山田が2年の春の選抜あたりからしか読んでいないので、徳川監督時代はわかりませんが、とにかく選抜決勝の土佐丸戦がすごかったのです。試合をしながら、山田、岩鬼、里中、殿馬のエピソードを交えて紹介し、最後は殿馬サヨナラホームランで勝つのですが、これが描かれる31巻はそれこそ漫画史に残る大作。スラムダンク井上雄彦先生も、ドカベンは31巻がクライマックスであり、スラムダンクも31巻で終わらせようと思ったのはドカベンの影響と公言。確かに、土佐丸戦とスラムダンクの山王工業戦は構成が似ています。もちろんその後の弁慶高校も死闘ではありました。

あぶさん(前半)

これは子供ながらに少し大人の世界を感じることができる作品でした。のちに妻となるサチ子さんと大学生の早苗さんによるあぶさん争奪戦も見応えがありました。私は完全に早苗さん派でしたけどね。この作品で、野村克也藤原満などといった選手を知ることができました。あぶさんが主力になった福岡編あたりからは読んでいませんが。代打あぶさんの酒しぶきが大好きでした。景浦「安武」なのであぶさんというのは大人になってから知りました。

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野球狂の詩

ハイライトは水原勇気編なのでしょうが、私がオムニバス形式の話が好きでした。「スチール100円」とか「メッツ買います」とか。岩田鉄五郎が「よれよれ18番」で、50代でも投げていたのを、そんなことあるかいって思っていましたけど、山本昌が50歳でマウンドに上がって笑いました。

⑥おはようKジロー

野球部のない学校に入ってしまった岡本慶次郎が野球部復活のために各スポーツクラブの精鋭を引き抜いていく話で、最後は甲子園で優勝までしてしまうんですが、Kジローがすごすぎてちょっと引きます。しかし、親父は一体何者なのでしょうか?メジャーリーガー?

一球さん

「男どアホウ甲子園」を読んでいないので、監督が藤村甲子園の女房だった豆タンと言われてもピンとは来ませんでした。スタープレイヤーの大友や佐藤のいる一軍と、我らが一球さん率いる三球士の構図は、「第3野球部」の下敷きにもなっている感じもしますね。また、野球素人である一球さんが野球を始めるあたりは、バスケ素人だった桜木花道スラムダンク)にも影響を与えている気がします。

⑧極道くん

大甲子園」終了後の、新しい甲子園作品。極道を目指した京極道太郎が、草野球で特大ホームランを打ったことで、野球奉公に出されるという、今ならコンプラ的にやばい作品。厳しい監督の下での管理野球も今までになかった作品。でも、実際に野球をやっている層にはリアルに感じれるものだった気がします。アイドルと球児の恋愛スキャンダルでどうのこうの、で終わりますが、それくらいなんでもない気がしますね。極道くんやKジローとか、もっと高校野球作品を描いて、「大甲子園2」をやって欲しかったと思っています。

⑨虹を呼ぶ男(ヤクルト編)

ついにセリーグを描いてくれるのかと期待しました。まだ野村監督就任前の弱小だったヤクルトに主人公が入団するお話です。よく長嶋一茂人気にあやかって連載が始まったと言われますが、長嶋がドラフトで指名されたのは連載が始まってから。ヤクルトが獲得するという情報があったのかも知れませんが。相撲編は読む気になれず離脱。

ドカベンプロ野球編(序盤)

ついに山田たちがプロ野球入り!と期待した作品でしたが、最初の1年で活躍しすぎで、2年目以降はドラマも少なかったですね。そもそも山田世代プロで活躍しすぎですからね。また、四天王に含まれない微笑三太郎が外様扱いなのもかわいそうだな、と思っていましたが。

さて、今は息子の新太郎さんが作品のマネジメントをしているそうなので、ぜひ、読みやすい形にして、いろいろな出版社から復刻版が出るようにご尽力賜りたいと思います。また、テレビ朝日には「水島新司大好き芸人」をぜひやっていただきたい。庵野秀明監督には、「シン・ドカベン」って無理か(笑)

とにかく、私にとっては野球を深く教えてくれた大恩人であります。ご冥福をお祈りいたします。